EXHIBITION
2017.12 野口哲哉 armored neighbor 〜鎧を着た隣人〜
17世紀初頭スペインの王宮画家ディエゴ・ベラスケスとベルギー国籍の巨匠、パウル・ルーベンスに国境を越えた親交があった事は広く知られている。ルーベンスは「バベルの塔」で知られるオランダの画家ブリューゲルの息子(植物画の名手)と合同絵画を制作した事でも有名だ。およそ同時期、闇の画家レンブラントと光の画家フェルメールが同じオランダ出身であり、活動時期に重ね代(かさねしろ)を有していた事は一般にはあまり知られていない。親子ほどしか年が違わない両者は互いの存在を認知していた可能性が高い。
では、そのレンブラントが江戸幕府3代将軍・徳川家光と一歳しか違わない事実はどうだろうか。日本で戦国時代の生き残りが「島原の乱」の鎮圧に従軍していた頃、31歳のレンブラントはアムステルダムに移住し、自身の工房を開く準備をしていた訳だ。
それから遡る事1世紀、かのイギリスの不埒王「ヘンリー8世」の肖像画を描いたハンス・ホルバインは毛利元就と同い年である。ちなみに武田信玄の父、武田信虎の生年もこの時期と云われている。
ホルバインと同じドイツ出身で、やや先輩にあたる画家ルーカス・クラナッハが生まれたのは10年戦争「応仁の乱」の真只中だ。更にイタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチやウッチェロを越えると日本は南北朝時代に差し戻り、そのまた以前、中世の画家ジョットがまだ少年で黄金背景のテンペラ絵画を教会で見つめていた頃、日本では鎌倉幕府の存亡をかけて武装した御家人たちが蒙古軍を迎え撃っていた。エルサレムの十字軍と壇ノ浦の源平が楽園の覇権を巡って並走するのは更にその100年前の出来事だ。
海を介して隣接し、空の下で繋がっている世界には無数の文明がひしめいている。絵具のメディウムをオイルから樹脂へと置き換えた仮初の灯を用いて、異なる文明が照らし出す 彼の人(かのひと)たちの姿を実験的に浮かび上がらせてみよう。
野口哲哉
The time when European culture of Gothic, Renaissance and Baroque had flourished was in fact, parallel to the stream of Medieval Japan, Sengoku and Edo period.
Numerous maestros colouring the age of Renaissance had lived in the same era as the rise and fall of Muromachi period, as the impressive painters of Baroque had shared their time axis with famous Sengoku warriors.
Giotto, who had produced sophisticated tempera works before the coming of oil paints is from Kamakura period, Cranach, known by his portraits of female beauty was born in the middle of Ōnin War, and Bruegel painted his Tower of Babel in the height of the battles of Kawanakajima.
In the early Edo period, still during the lifetime of Sengoku patriarch, Rembrandt was born a year after Tokugawa Iemitsu and presented his masterpieces in portrait to the Dutch art world.
Would the life of a person be found again through the eye of someone else?Let me search for people from the eyes of my neighbours far in the past.
Tetsuya Noguchi